技術セミナー 日本アパレル工業技術研究会(東京・新橋 近藤繁樹会長)の第36回アパレル工業技術セミナーが2018年3月20日(火)に開催されました。 会場は港区西麻布の霞会館。アパレル関係者が約50名が参加されました。セミナー内容は下記。 講演1.「身体測定のための人体測定学定義」13:30〜14:30     講師:前・実践女子大学教授 高部啓子氏 講演2.「嬉し楽しい物語」と「技術革新」14:40〜16:00     講師:光和衣料株式会社 代表取締役社長 伴英一郎氏 なお、JIS改訂の予定について日本アパレル工業技術研究会(略称:アパ工研)顧問の中山悦朗氏から説明がありました。  初めに近藤会長の挨拶があり、「この技術セミナーはアパレル業界のインフラでありISO国際規格はアパレルのサイズだけではなく、縫製機器に関しても最近進められている」ことが紹介された。 1.ISO/TC133と人体計測定義 「身体測定のための人体測定学定義」は最近規格化されたISO8559-1に関する講演で、まずはISO/TC133の概要説明があり、 その後2017年3月にISとして発行されたISO-8559-1についての説明があった。 このISO-8559-1では基準点(Landmark points)が19点、高さ(Level)が7項目、計測項目として93項目が設定された。人体計測は建築や人間工学でも設定されているが、アパレル設計やボディ製作のために必要な項目があり、項目数が多い。また、ISO-8559-1はJISでの「衣服のための人体用語と対照されるが、いくつかの違いがある。 ランドマークではショルダーポイント(SP)は肩峰点となったこと、のど仏点が追加されたこと、人体表示が線画と3D表示の両方になったことなどである。 基準線ではウェストラインとヒップラインの中間をミドルヒップラインとするなどヒップラインが増えている。ウェストは水平であり日本のナチュラルウェストは採用されなかった。手足に関しては人体とは区分して定義されている。腕は上下で分かれていて袖丈は計算項目となった。裄丈は新たに追加された。 ISO-8559-1評価できると思うが、今後、業界への周知とJISの改訂が課題と思われる。 2.光和衣料の説明  次は伴英一郎氏からユニークと言われている光和衣料に関しての講演であった。光和衣料の取扱アイテムは女子学生服であり、まず学生服に関する概要説明があった。制服は約15年でモデルチェンジされる。制服の効果は大きく、品川女子高校ではモデルチェンジしたことにより募集人員は60倍になり、学校の偏差値も20上がったと言われている。また、地域差もあり、福岡や愛知はセーラー服が多いこと、最近は紺以外の色の人気が高い。制服に要求されるのは機能、美しさ、学校の特徴をあらわしているか、価格の4項目であり、学校の特徴を表現するために素材やスタイルなどを検討して提示している。例えば学校に関連した色をタータンに取り入れるなど。  次に学生服を着たモデルがバレーとダンスを踊っているビデオが紹介された。運動性の良いことがわかる。企業のコンセプトは、従業員には楽しさとやりがいを、顧客には楽と便利さを提供すること。光和衣料はdesignfarmであり、常に新しい価値を追求している。自社ブランドschool pearl でグッドデザイン賞をとっている。  工場はITを積極的に取り入れている。年間の受注変動を予測し、7000品番の仕掛かりは単品管理、年度末でも残業せずに納期を確保している。オーダーに関しては縫製能力、生地と副資材の有無からすぐに回答できる。資材のピッキングは探さずに位置が分かる。オーダー後のグレーディング、マーキングは自動化していて受注から15分後には裁断が始まる。発注はスマホからも可能で在庫のある商品はすぐに発送、ないものは製造して出荷する。製造過程もリアルタイムで分かるようになっている。  最近は3D計測した結果個人のサイズに合った商品を選択できるようになっている。計測は0.5秒、サイズ対応は学生の成長を考慮して現在のサイズにぴったりの服、ややゆとりのある服、多めのゆとりの服の3種類から選択できる。現在開発しているのは採寸した結果を元に当人にSMLをバーチャルに着せ付け、着圧やゆとりを表示、歩行シミュレーションの画像をスマホで送って家などで判断していただく、というもの。  その他、工場でのファッションショーやハロウィンの仮装、ライブなどのイベントの模様も紹介された。 3.JIS改訂  アパ工研の中山顧問から衣服サイズJISの現状と改訂にかんして、説明があった。  現在のJIS衣料サイズは約25年前に計測されたデータを元に設定されている。その後2004年から2006年にも計測されたが、地域は東京大阪、神戸に限定され、全国的な資料とするには不適切であるとの結論であった。最近、全国で3500人が計測され、この解析によると、身長などで差異が認められている。一方ISOの計測方法が改訂されたこともあり、成人男子、成人女子、ファンデーション、靴下の改訂に着手する。8月には企画書を作成し、日本規格協会に提出、アパレル関連業界の参加を求め、規格協会と合同で改訂作業を進める。 次回の技術セミナーではISO8559-2でのサイズの表示方法、ISO8559-3でのサイズピッチの決め方に関して説明する予定。